子供用ベッドで眠る選手たち

クラブハウスでは、体の大きな選手たちが子供用に作られた2段ベッドで窮屈そうに寝ていた

チームに合流した当初、生活環境が約束されていなかった選手は、クラブハウスで生活していた。意外と何でもあるアメリカのクラブハウスでは、ベットがない以外、基本的に不便のない生活を送れるのだ。1週間くらいして、子供たちがサマーキャンプを行う施設をGMが確保し、私も含め選手たちの多くは、コテージ村のような環境で生活をしていた。

子供用に作られた2段ベットは非常に小さく、身体の大きな選手は寝返りさえ窮屈そうであり、ベットから足をはみ出しながら寝ていた。朝食は、そこの施設で出される朝食を食べ、昼と夜はスポンサーレストランなどのミールチケットをもらい食事をしに行く生活だった。

ふざけてビールを飲んだ選手が解雇の危機?

ある日、アメリカらしい体験をした。その日に渡されたミールチケットの店が定休日で、全員が球団オフィスで待っていた時、数人の選手がオフィスにあったビールを見つけ、ふざけて一気飲みして遊んでいた。

その日は何事もなく終わったのだが、翌日、真っ赤な顔をしてカンカンに怒ったGMが朝のミーティングに現れた。最初は監督と話をしていて分からなかったが、GMは昨日のビールのことに怒っているようだった。そして、GMは名指しで「あいつが飲んでいるのをみた」と怒鳴り始めたのだ。

「監督」が見せた問題解決力

私は、状況は違えど日本の部活やクラブでもよくあることだなと思い、状況を観察していた。誰がどのように怒られて、GMが納得するのにどのくらい時間がかかるのかな、と経過を見守っていた。私は、悪いことをした選手が、選手全員の前でGMと監督よりお叱りを受ける、またはチームを解雇されるだろうと予想していた。

チームが練習していたグラウンド

しかし、状況は全く違った。監督は選手に、ビールを何本飲んだのかを聞いた。そして「全部なくなっていた」と話したGMの発言と食い違っていることが分かると、GMに対し「さっき全部なくなったって言ったよね?」と問いただした。

GMは焦りだし、「問題はそこじゃない。勝手に飲んだ選手に問題がある」と反論した。すると監督は「もういい。ビールは私が全部弁償する。彼らは野球をするためにグラウンドに来ているのだ」と言い放ち、今日の練習メニューの話に移った。監督が選手に今日の予定を伝えている間、GMは怒鳴り続けていたが、監督は一切無視していた。GMはグラウンドを振り返ることなく、何も言わずに、その場から立ち去った。

 日本であれば、状況把握や事実関係の確認に時間が取られ、その日は練習ができなかったのではないか。その日の練習ができなければ、チーム全員が嫌な思いをし、嫌な雰囲気ができあがっていたかもしれない。しかし、この時に痛い思いをしたのはビールを飲んだ当の本人のみだった。彼は普段から陽気な選手だったが、悪いことをしたにも関わらず、監督に守られた形になったため、その日は終始、申し訳なさそうな顔をしていた。そして、いつも以上に一生懸命声を出しているようにすら感じた。私は、チームの危機を、チームの絆を固くするチャンスに変えた監督のプロの指導者としてのスキルを垣間見た気がした。Respectfully,

TOMA