中島彰吾×色川冬馬トークショー in東京
これまでイランをはじめ、パキスタンや香港とアジア3ヶ国で代表監督を務めた色川冬馬氏が今年7月に設立した「ベースボール・オンライン・アカデミー」(以下BOA)が初の公開イベントを開催した。
今イベントは元東京ヤクルトスワローズの中島彰吾投手と色川氏によるトークショーで2人に共通するのは選手、また監督として海外の野球を経験していることや海外生活を通じて人生の新たな選択肢を見出したことにある。
去る10月19日から3日間、東京・栃木・仙台の各会場で2人のこれまでのキャリアを追いながら参加者にも彼ら同様に人生の選択肢やヒントを提供した。
全3回でお届けする今レポート。今回は東京で行われた初日の模様をお届けする。
東京を皮切りに仙台へ北上
記念すべき初日の会場となったのは東京の神保町にある神田カンファレンスルーム。
普段はセミナーや懇談会などで使用されるという会場にBOAでは中島投手と色川氏がこれまで世界で袖を通したユニフォームを展示した。
中島投手が今季プレーしたオランダリーグのツインズのものや色川氏が日本代表を率いた時のユニフォームなど日本で2人しか持っていないとても貴重な品々であった。
こうした準備を進める中ですでに開場前から多くの参加者が今か今かとイベント開始を待っていた。
そして19時頃、ついにBOA初イベントの幕が開けた。
出会い
司会からBOAの説明、そして中島、色川両氏の紹介を経てついてメインの2人がトーク専用の椅子に座った。
最初の話題は2人の出会いから始まった。
2017年オフ、色川氏は野球選手に海外でプレーする機会をつくろうと台湾で試合をしながら海外球団への入団を目指す「アジアンアイランダース」を設立し準備を行っていた。
選手を集める中で日本プロ野球「NPB出身者を入れたら面白いのではないか」という発想から当時、広島で行われた12球団トライアウトに足を運ぶ。
NPB復帰を目指して奮闘する選手がほとんどで球場を出ると多くのファンがサインを求める中で色川氏だけは「海外野球に興味ありませんか」と声をかけていく。
良い意味で場違いな発想と行動だったのだが、これが中島投手との出会いに繋がった。
その後、熱心な誘いによりアジアンアイランダースのユニフォームを着た中島投手は台湾での好投のおかげもありオランダリーグに所属するツインズへの入団が決まった。
日本人もいない環境で中島投手はどのようにシーズンを戦いぬいたのか。

誰も知らないオランダ野球
次はオランダ野球についての話題に移る。
「オランダで2か月半の間、給料が振り込まれませんでした」
―中島投手から衝撃的な発言が飛び出す。
オランダではプロ契約をして入団したものの、日本で貯金したお金を切り崩しながらなんとか生活する日々を送っていた。
当時の苦労はそれだけはなく、やはり海外で直面するのは言葉の壁だ。
「英語も全然喋れなくてハローやセンキューくらいしかわかりませんでした」と当時のことを話していた。
つまり環境が整っていた日本と違いすべてイチから自身の力で乗り越えなければならない環境に飛び込んだことになる。
このおかげもあり中島投手は
「ないならないなりの生活をしなければならない」
と想像するだけでも壮絶であり、
厳しい場所で投げてきた中島投手は
「考えて何をしなければならないのか」
とオランダで次を見据える力を身に付けることができたという。
日本人に今求められる考える力
オランダでの環境を通じて日本とは違う考え方を得た中島投手。
日本プロにいた当時よりも人生での喜びを得たことで彼の表情は自信に満ち溢れていた。
トークショー後半には参加者からの質問コーナーが設けられた。
なんと中島投手の母親がサプライズ参加しており、会場は驚きの声に包まれた。
表には出ていない中島投手の幼少期のエピソードが披露され、ほっこりとする場面もあった。
イベント終了後には中島投手、色川氏との個人的に話す時間も設けて野球の技術的な質問、記念撮影など参加者は夢のひとときを過ごしていた。
初日ということもあり、ドタバタもあった東京会場でのイベントは無事に終了。
その夜、2日目の会場となる栃木へと移動した。
アジア野球ライター
豊川 遼 a.k.a. とよっち