中国を猛追する「野球後進国」

9月16日に台湾で開幕した、アジア最高峰の野球大会「アジア選手権」9月20日、パキスタン代表は目標としていた中国代表に敗れ、台湾で行われたアジア選手権の幕を閉じた。1勝4敗でアジア5位に終わったパキスタン代表だが、インドネシアを倒したことで来年のWBC予選への出場資格を得た。この国で野球が始まって23年、パキスタン長年の夢である世界大会への出場が決まり、代表関係者はお祝いムードだった。まだまだ可能性を秘めたままに幕を閉じたパキスタン野球の挑戦。そんな5日間の軌跡を記していく。

はじめに、アジア野球選手権における各国の位置について説明したい。まず、アジアで圧倒的な力を誇る日本、韓国、台湾は各国プロ野球シーズン中のため社会人やプロの若手選手で組まれており、トップチームではない。それでも、この3カ国の1、2、3フィニッシュは今回も変わりはなかった。この3カ国の力は、いまだにアジアでは圧倒的である。

そしてその下に位置するのが、不動の4位中国。この中国のポジションが変わるとき、アジア野球の歴史が動くだろう。長年4位に付ける中国は、3位以上と力の差があり追いつけるように思えないが、5位以下のチームとも力の差がある不思議な構図にある。しかし近年、その5位以下に位置するパキスタン、フィリピンなどの野球後進国が猛追し、アジア野球界を盛り上げている。

代表は全員クリケット経験者

全員がクリケット経験者で構成されているパキスタン代表。打つ、投げると言う野球特有の動作における能力の高さの秘密は、このクリケットだと言われている。彼らが持つ能力は、どんなに優秀な指導者でも与えることはできない二物であり、まさに私が惚れ込んだ「クリケット野球」である。また、いかなる環境でもアグレッシブに攻める姿勢は、野球先進国に挑戦する上で必ず武器になると踏んでいた。世界を相手に「クリケット野球」がどこまで通用するか、お楽しみいただきたい。

しかしながら、一筋縄ではいかないのが野球後進国の宿命である。何事も予定通りには進まなかった。大会規定の登録選手は18名であるが、パキスタン代表チームは野手10人、投手5人の15名で格上相手に5連戦することになった。来るはずだった団長と投手は台湾への渡航の日、空港に現れなかった。団長、ベテラン投手の不在、そして登録名簿に名前のない人間がアジア野球連盟への報告もなく帯同しているなど、チームを取り巻く状況は厳しいスタートとなった。チーム責任者が不在のため、急遽、以上の問題に私が対応しなければいけなくなった。

番号が裏返ったユニホームは認められず

番号が裏返ったユニホームで練習するパキスタン代表選手

そして全チームが揃う初日の代表者会議。ユニホーム、バット、ヘルメットに不備があったパキスタン野球は、アジア野球連盟から指摘を受けた。白い綿シャツにパキスタンのロゴを付けただけの「ホーム用ユニホーム」が、ユニホームとして認められなかったのだ。ビジター用の緑のユニホームは番号が裏返っていて、そもそも番号として読めなかった。登録名簿と番号が違ったり、なぜかリトルリーグのロゴが入っていたりと、さんざんだった。

その問題自体は台湾野球協会やアジア野球連盟の協力で解決することができたが、私は先方の物言いに違和感を感じていた。確かに、誰がどう考えても、国際大会に参加してユニホームがないと言うのは信じられない。私も日本人なので、大会役員の気持ちも十分に理解しているつもりではあった。しかし、問題が発覚するつれ、半分呆れ顔で「バカにするよう」な物言いになっていった。

「一生懸命」のレベルは国によって違う

台湾に乗り込んだパキスタン代表

会議中、発言はしないが、英語を理解するパキスタン人は、明らかに落ち込んでいた。私は「相手のことを考えられない」連盟側の横柄な態度が悔しくて、パキスタン人に対し申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちだった。パキスタン野球連盟に大きな非があり、当然の状況ではあったが、この会議に出席したパキスタン人は連盟の人間ではない。不可解な点を追求すればきりがないが、大会役員の物言いは、それに見合う人間、いわゆる十分な環境がある国だけが野球をすればいいと言っているようにも感じた。アジア野球連盟本部が置かれる台湾の人々がこういった態度で臨むのであれば、アジア野球の将来はない。

この苦しい環境でも、なんとか頑張ってきた選手たちをフィールドに立たせたい。そして、一生懸命のレベルは、各国の状況によって違うということを理解してほしかった。私は、台湾野球協会関係者を会議室の外に呼び、事情を説明し自分の想いを伝えた。多少、口論にはなったが、ピンチはチャンス。その後は、お互い理解することができ、良い関係を築くことが出来た。これから起こりうることを示唆するようなスタートになった。

Respectfully,

TOMA