最大のライバル・中国に挑む

西アジアの絶対的王者、パキスタン。この20年の急速な成長に加え、西アジア地域での野球の普及への貢献度は、目を見張るものがあった。しかし、近年パキスタン野球はアジア4強の壁を前に停滞を続けている。その打開策として外国人監督を起用したが、再び目標としていた中国戦に敗退した。
アジア選手権期間中、パキスタン代表が2016年にアメリカで開催されるWBC予選の出場資格を得たという朗報が入った。もし野球の神様がいるならば、何度折れても立ち上がり続けるパキスタン代表を見捨てなかったと言えるのではないか。野球場すらない国パキスタンが、過酷な環境を乗り越えWBCという野球の世界大会予選へと駒を進めた快挙を、いち野球ファンとして祝福したい。
最終回に立ちはだかったアメリカ野球の「紳士ルール」

局面は違えどアメリカ野球には、こういった場面における暗黙の世界が存在する。明らかに点差が離れ、勝ちが決まったような試合では、サインプレーなどの戦術などは使わず、ただ打って、走って、守るというシンプルな野球本来の姿に戻るのだ。これは、アメリカ野球における紳士な行為であり、日本野球とは違う価値観の一つだと私は解釈していた。また、こういった場面で、盗塁などの個人記録を稼ぐ行為は、ビーンボールなどの報復の対象となり、相手に失礼な行為とみなされるのだ。
底知れぬ可能性を持つパキスタン野球

この試合、選手は本当にすごかった。苦しい場面で決めた牽制死、ダブルプレー。何度も苦しい場面を、練習で鍛えてきた守備で乗り越え、流れを自ら引っ張り続けた。それが、最後の最後に、私はみんなの努力を台無しにする大きなミスを犯した。もし私が盗塁のサインを出していても、うまくいった保証はない。しかし、競技スポーツにおける結果は全てを語る。
この事実は、プレーしていた当のパキスタン選手も、観戦していたお客さんも気付いていなかったかもしれない。マクラーレン監督と私の暗黙のやりとりで終わっていたかもしれない。パキスタン野球連盟も、WBC出場を決めたことで、すでに大会を終えたかのようなお祝いムードだったこともある。
それから2週間、信じられないほどに私は活力が湧かなかった。結果を残せなければ、ただの人。改めて痛感する一戦となった。一方で、アジア選手権という大舞台にて、習得したスキルを堂々と披露する選手の姿からは、底知れぬ可能性を感じた。私が落ち込んでいる2週間、半分以上の選手が「練習再開」のメッセージをくれた。歩みを止めることを知らないパキスタン野球、2016年、念願のWBCへと挑戦する。新たなステージ、アメリカ・ニューヨークで、パキスタングリーンがどんな輝きを見せるのか、目が離せない。
=おわり
Respectfully,
TOMA